「組織的犯罪処罰法改正案」いわゆる「共謀罪」の成立に抗議するとともに同法の即時廃止を強く求める要望

6月15日、「組織的犯罪処罰法改正案」いわゆる「共謀罪」について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続きにより、本会議の強行採決が行われ、成立しました。同法案は「共謀」の文言は使っていませんが、過去三度国会に提出されながら国民の大きな反対によって廃案となったいわゆる「共謀罪法案」そのものです。「共謀罪」は相談や合意だけでなく、準備行為を加えて処罰条件を限定するとしていますが、どのような相談や準備が犯罪になるかは捜査機関の裁量にゆだねられ、憲法が保障する「思想・信条の自由」や「言論の自由」を奪う違憲立法であると同時に、刑法の土台を根底から覆すものです。
政府は「国際条約批准のために必要」だとしていますが、実際に条約を批准した187カ国のうち、法整備をした国は2国(ノルウェー、ブルガリア)だけであり、日本弁護士連盟が指摘しているように、「共謀罪法案」がなくても条約批准は十分可能です。しかも、日本はテロ防止のための13の国際条約を締結しています。また、政府は、「2020年の東京オリンピックを開催できない可能性がある」として世論の同意を誘導しようとしていますが、組織的な犯罪が行われた場合でも現行の国内法で十分に対応可能です。政府は、あくまでも犯罪主体は「組織的犯罪集団」に限定していること、「計画」が存在し「準備行為」がなされることを処罰条件とすることをあげて、人権侵害などにつながるものではないと主張しています。
また、法案の目的に「テロ」の文言がないにもかかわらず、条文には「組織的犯罪集団」に「テロリズム集団その他の」が付き、「その他の」は捜査機関によりいくらでも恣意的に解釈される危険性があります。国会答弁でもいわゆる「普通の団体」でも「性質が変わったと認められた場合は処罰対象」と明言しています。「性質の変化」を決めるのは捜査機関です。原発や米軍基地の問題、巨大開発に反対する環境保護の活動など政権の意向に反対する市民も「威力業務妨害」で処罰対象とされかねません。「計画」「準備行為」について、金田法務大臣は「メールやラインでも犯罪の合意が成立することはあり得る」「『合意』と『準備行為』の判断は捜査機関だ」と国会で明言しています。
「内心」の「合意」だけで処罰につなげ、市民生活のあらゆる局面での徹底した監視が許された戦前の「治安維持法」のもと、多くの市民や団体が弾圧され、国民を戦争へと駆り立てていった歴史を繰り返すことは断じて許すことはできません。
市民ネットワーク北海道は、国民の「思想・信条の自由」や「言論の自由」を侵害し、監視社会につながる「共謀罪法」の成立に抗議するとともに、同法の即時廃止を強く求めます。

6月15日
内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長宛に提出しました。